当社はこれまで、ISO26000に基づいた重点領域を定め、CSR活動に取り組んできました。2018年度には、外部要請への対応に加え、当社が優先的に取り組むべきCSR活動テーマを明確にするため、マテリアリティ(CSR重要課題)を再特定し、それをもとにCSRの実践に取り組んでいます。
なお、マテリアリティ分析・特定は数年に一度実施することとしており、2021年度中に実施いたします。
経営計画、ISO26000、GRIスタンダード、国連グローバル・コンパクト10原則、社会的責任投資の評価項目を踏まえ、当社の事業活動におけるCSR課題をバリューチェーンごとに幅広く把握、整理しました。
CSR課題群に対して、「当社が考える重要度」と「ステークホルダーから期待される重要度」を分析し、それぞれを横軸、縦軸としてマッピングしました。
* 2021年度に重要度を見直した項目を太字で示しています。詳細は以下の「ステップ4レビュー」をご覧ください。
「当社が考える重要度」については、取締役、執行役員およびCSR委員が当社の事業の取り組み方針に照らし合わせて各課題に対する優先度を評価し、重要度を設定しました。
「ステークホルダーから期待される重要度」においては、社外のステークホルダーの代表として、責任投資を実践する機関の評価項目に加え、株主・投資家の皆様から寄せられている意見を取り入れ、重要度を設定しました。今後、マテリアリティの項目および重要度を見直す際には、さらに多くのステークホルダーの意見を取り入れます。
マテリアリティ分析の結果は、CSR委員会において討議、決定した上で、CEOを議長とする経営会議にて承認を得ています。
2018年度に行ったマテリアリティ分析においては、分析のプロセスおよび特定したテーマ、今後の取り組みについて、外部有識者とのダイアログを実施し、その妥当性について確認しました。
小野薬品らしいマテリアリティマテリアリティ特定のプロセスやフローはよいと思います。一方で、少し辛口な意見になってしまいますが、「革新的な医薬品の創製」以外は製薬会社に見えにくいと感じました。小野薬品さんだからこそのマテリアリティを外野としては知りたいと思ってしまうのです。
見直しをなさる際には、多様な外部ステークホルダーとのコミュニケーションを通じた意見を取り入れていただきたいです。特に、医療従事者や患者さん、また、それらの方と接する機会の多い従業員からの意見を取り入れることで、より製薬会社らしい、小野薬品さんらしいマテリアリティになるのではないかと思います。
今後、グローバル展開を意識される上では、医療アクセス、動物倫理、サプライチェーンの課題の重要性が高まってくると思います。医療アクセスでは、糖尿病などの非感染性疾患にも取り組む必要があり、低所得国の医療アクセスの課題にどの程度コミットし、取り組んでいくかという点については、グローバル化を目指す小野薬品さんにとって非常に重要ではないでしょうか。
マテリアリティにも長期の財務的視点を織り込んでマテリアリティの特定の全体のフローとしては、良い方向に進んでおられます。特に、マテリアリティを特定するための最初のステップとして、社会課題や環境課題を丁寧に洗い出されているところです。事業のバリューチェーンやライフサイクル等の観点から30項目程度を拾われていますが、製薬業界にとって影響があると私が考える課題は網羅されており、必要なステップを踏まれていました。
また、俯瞰して捉えた社会課題や環境課題からマテリアリティを特定していくという流れも大きな問題はないですが、財務の視点をもっと強く意識していただければと思います。マテリアリティ特定は、小野薬品工業さんにとって重要度の高いステークホルダーの関心事項を踏まえながら、長期的に事業成長する上での重要課題を明確にするプロセスです。今回特定した重要課題に対応すれば長期的な事業成長、すなわち収益性や財務安全性を伸ばしていくことができるということを、製薬業界以外の方にもわかりやすく理解していただけるよう改善していく余地があると感じました。
同様に、特定した重要課題に対してKPIを設定する過程でも、長期的な事業成長という財務インパクトが期待できる内容を設定してくことが重要です。財務的視点をぜひ意識しながら、KPI設計をしていっていただきたいです。
社外の環境変化および社内の環境変化に対応するため、毎年マテリアリティの見直しを行っています。
2021年度においては、ステークホルダーとの対話等から得られた外部情報と、当社を取り巻く事業環境の変化を踏まえ、それぞれの重要度を見直した結果、マテリアリティマップについて以下の見直しを行いました。
「法令遵守とコンプライアンスの徹底」
・縦軸「ステークホルダーから期待される重要度」を一段階上げました。
・理由:当社社員が贈賄で有罪判決を受けた事案を踏まえ、最重要課題として法令遵守とコンプライアンスの徹底に取り組む。
「コーポレートガバナンスの向上」
・縦軸「ステークホルダーから期待される重要度」を一段階上げました。また、名称を「グローバル化に向けたガバナンスの強化」から「コーポレートガバナンスの向上」へと変更しました。
・理由:企業のガバナンス強化への要請は高まっており、当社に対する期待もグローバル事業展開を見据えて更に高まると考えられるため。
「医療アクセスの改善」
・横軸「当社が考える重要度」を一段階上げました。
・理由:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって社会課題としてより強く認識されるようになり、グローバル企業を目指す当社にとって更に重要度が高まってくると考えられるため。
「人権の尊重」
・縦軸「ステークホルダーから期待される重要度」および横軸「当社が考える重要度」を一段階上げました。
・理由:従来からの社会課題のひとつであり、人権課題解決に向けた企業の積極的貢献がより期待されるようになっているため。
持続可能な開発目標(SDGs)は2015年に国連サミットで採択された国際社会共通の目標であり、17の項目からなります。各マテリアリティと関連するSDGsは以下の通りです。
各マテリアリティ目標の進捗は経営会議において半年毎に報告、管理しています。
マテリアリティ | 関連するSDGs |
---|---|
革新的な医薬品の創製 | 3, 9, 17 |
製品の信頼性と安全性の確保 | 16 |
知的財産戦略 | 3, 17 |
人財育成の推進 | 4, 5, 9 |
法令遵守とコンプライアンスの徹底 | 16 |
責任あるマーケティング・プロモーション活動 | 12, 16, 17 |
製品の安定供給 | 12, 17 |
気候変動への対応 | 3, 7, 9, 13, 17 |
コーポレートガバナンスの向上 | 16 |
CSR調達推進によるサプライチェーン管理 | 8, 12, 16, 17 |
雇用の確保・維持、働きがいのある職場環境作り | 4, 5, 8 |
当社では、CSR活動を推進するために代表取締役社長を責任者とし、CSR担当役員である常務執行役員/コーポレートコミュニケーション統括部長を委員長とする「CSR委員会」を設置しています。幅広い部門の責任者を中心に構成されたCSR委員会では、CSR活動の重要課題・案件を審議・決定し、その活動状況は定期的に経営層へ報告されます。なお、経営層の検討・意思決定が必要な重要事項については経営会議にて、更に重要な案件については取締役会にて報告・検討されます。
当社は2017年11月、国連が提唱する人権・労働・環境および腐敗防止に関する 10 原則からなる国連グローバル・コンパクト(以下、UNGC)に参加しました。関連法規を遵守するとともに、日々の活動の中に「グローバル・コンパクト」の 10 原則を浸透させ、全社員の行動につなげています。
私たちは革新的な医薬品の創製を通じて、SDGs3、9、17の達成に貢献します。
目標3「すべての人に健康と福祉を」では、「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念のもと、医療用医薬品に特化した研究開発型企業として、事業活動を通じて目標達成に取り組みます。SDGsターゲットで挙げられている「非感染性疾患の死亡率」については、がんや免疫疾患、中枢神経疾患などの重点研究領域を始めとする、いまだに医療ニーズが満たされない疾患に対する独創的で革新的な治療薬を創製することで貢献します。また、「感染症への対処」に対しては、ジフテリア・百日咳・破傷風混合ワクチンおよびB型肝炎ワクチンの支援に加えて、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金への参画を通じた、マラリア、結核、顧みられない熱帯病などの市場性の低い治療薬や、ワクチン、診断薬などの新たな治療薬によって貢献します。
目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」では、イノベーションの促進および研究開発基盤構築が当社の貢献するべき点と考えています。新薬創製の研究開発を活発に行うために、当社内の研究開発に投資をするのはもちろんのこと、医師主導治験などにも助成を行っています。加えて、公益財団法人 小野医学研究財団やONO Pharma Foundationによる国内・海外研究者への研究助成を通じて、研究の振興を図り、イノベーションの土壌作りに貢献します。
また、当社にとってはイノベーションの促進と目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」は切り離せるものではありません。「革新的な医薬品の提供」は当社単独のみならず、多くのパートナーシップによって達成していきます。当社は、「オープンイノベーション」という言葉が盛んに使われるようになるかなり以前から、さまざまな分野で世界の最先端技術や知見を活用した自社創薬を推進してきました。同時に、新薬候補化合物の導入および導出にも積極的に取り組んでいます。また、ベンチャー企業や他の製薬企業との提携活動に加え、大学、研究機関、行政、地域社会、NPOなど、多様なステークホルダーとパートナーシップを形成し、「オープンイノベーション」で課題の解決に取り組んでいます。なお、当社の主な提携先企業はこちらからご覧いただけます。
法令遵守や企業統治、透明性の確保はもちろんのこと、「グローバルスペシャリティファーマ」の実現に向けて当社が持続的に成長していくためには、すべてのステークホルダーの利害を尊重した事業活動や対話を通じて関係を構築し、それを継続的に強化していく必要があると考えています。
当社は、患者さんや医療従事者、株主および投資家の皆様、お取引先、地域社会、社員、関連する行政や業界団体など、あらゆるステークホルダーとのコミュニケーション/建設的な対話を行うとともに、すべてのステークホルダーに対して、正確・公平・公正・迅速に、必要とされる情報を開示することを基本姿勢としています。
ステークホルダー | 関係構築/関係強化の機会 |
---|---|
患者さんや医療従事者 | 真に患者さんのためになる医薬品の創製 |
高品質な医薬品の安定供給 | |
医薬品の適正使用のための情報収集と情報提供 | |
株主および投資家の皆様 | 持続的成長による安定的な利益還元 |
理解促進のための情報提供と対話 | |
研究開発・ESGなどの情報提供 | |
お取引先 | 公正かつ透明性のある競争の機会の提供 |
CSR調達の推進 | |
地域社会 | 経済発展への貢献 |
環境保全活動、地域社会貢献活動 | |
社員 | 成長の機会の提供 |
安心して働ける環境の提供 | |
健康保持および健康増進の推進 | |
社内報や社内イントラネットによる情報発信 | |
行政・業界団体 | 情報提供と対話 |
日薬連などの関係団体での活動と情報交換 | |
NPOs/NGOs | 医療アクセス改善に向けての各種プログラムを通じた連携 |
各種イニシアチブへの参加 |
今後とも、ステークホルダーの皆様からの期待を理解し、中長期的に成長しつづける企業であるべく、研究開発型医薬品企業として、さまざまな挑戦を続けていきます。
当社は2021年11月12日に大阪府と大阪府民の健康づくり等の推進に係る連携・協力に関する協定を締結しました。
行政の取り組みと民間企業のCSV※1活動とを協働させて、社会課題解決を図るために公民で連携しています。当社は「地域社会との対話」を事業活動における重要なテーマの1つとして取り組みを進めてきております。大阪府に本社を構える製薬企業として、大阪府と共に健康にまつわる社会課題解決に取り組むことで、行政と企業の互いの強みを活かし、今後も府民の健康増進に協力していきます。
詳細につきましては2021年11月12日のプレスリリースよりご覧ください。